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有 罪 !




アフガニスタン国際戦犯民衆法廷第4回公判

2004年3月13日

判  決

 

 法廷意見

 本法廷(The International Criminal Tribunal for Afghanistan, ICTA)は、周到に準備された多数の公聴会で収集された証拠および意見を踏まえ、さらに3回にわたる東京での公開の法廷での審理に基づき、検察官が起訴した事実について、判決を言い渡すものである。
 2001年10月に、アフガニスタンの国土において、アフガニスタンの人々に対して、アメリカおよびイギリスなどが軍事力を行使したことに端を発して、日本の平和運動家が発議して、この法廷運動が開始された。この法廷運動には、公聴会での意見陳述や証拠の提示、公判廷での証言や意見発表など、多くの市民が関与し、さらに多くの市民が精神的・物質的に援助を借しまなかった。この法廷で扱う事実は、複雑であり、しかも最貧国の一つであるアフガニスタンという日本からはるか離れた地域で起こった出来事である。攻撃する米英軍は報道規制を行い、自由で独立した報道機関によって、つぶさに実情が伝えられるという状況ではなかった。にもかかわらず、日本を始めとして、世界の各地に存在するアメリカおよびイギリスの軍事基地や補給施設などを通じて、世界は深く関わっていることは言うまでもない。
 われわれは、世界市民を代表して、このような不正義を見逃さずに、この法廷運動に関わったすべての市民の勇気をたたえ、物質的にはけっして報われないこの運動を支えたすべての市民の努力に深甚の感謝を申し上げる。
 われわれはまた、この法廷運動によって示され、本日の判決に結実した公的良心(public conscience)の表明が、人類の英知である国際法および国際人道法、国際人権法ならびに各国の憲法、人権憲章によって画した「法の支配(rule of law)」「平和の法理(legal principles of peace)」を踏まえ、さらにこれを推し進めるものであることを、誇りに思っている。
 本法廷を代表して、ここに述べる法廷意見は、いくつかの点を除いて、この法廷を構成したすべての判事の一致した意見である。5人の判事は、アメリカ、イギリス、インド、日本と、それぞれ異なる法文化をもつ成熟した国から、この法廷に参加した。ピーター・アーリンダー判事がルワンダに関する国際刑事法廷で弁護人として活動するために一部分欠席したことを除いて、5人の判事は、これまで3回にわたる公開の法廷において、つぶさに証言を聞き、ビデオを見て、さらに証拠書類を読み、熱心に評議した。それぞれ熟慮して、みずからの意見を語り、意見書を起草した。この法廷意見では、このような判事の個別的な意見を踏まえて、共通して確認できる点を明らかにした。この判決は、アフガニスタンにおいて不幸にも被害に遭われた人々、近隣諸国その他において不幸に遭われた人々、アメリカ、イギリス、インド、日本において勇敢にも平和と正義のために市民としての良心に従った活動に従事した人々、公聴会や公開の法廷に参加された人々、この法廷で勇気をもって証言した人々、この法廷を物心両面から支えてきた実行委員会の人々、そして本日、歴史的な判決に立ち会う皆さんの熱意と関心に答えるものである。

 I 主  文

 2003年6月30日の起訴状および同年12月13日の追起訴状によって、検察官がアメリカ第43代大統領にして米国軍最高司令官である被告人ジョージ・ウォーカー・ブッシュに対して起訴した事実について、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷は、次の通り判決を言い渡す。
1 アフガニスタン国際戦犯民衆法廷(ICTA)規程第2条[侵略の罪]および刑事国際法に基づき、アフガニスタンとアフガニスタンの人々に対す侵略戦争について、有罪
2 ICTA規程第3条[戦争犯罪]第1項(a)号[殺人](b)号[拷問・非人道的扱い](c)号[深刻な苦痛・重大な傷害](d)号[財産の大規模な破壊・徴発](f)号[戦争補虜の裁判を受ける権利剥奪](g)号[強制移住・移送・監禁]、同第3条第2項(a)号[民間人攻撃](b)号[民用物の攻撃](c)号[人道的支援の人員等の攻撃](d)号[過激な攻撃](e)号[非武装都市等の攻撃]2(f)号[降伏した戦闘員の殺傷](h)号[占領軍による強制移住・移送](i)号[宗教等の施設の攻撃](k)号[偽計殺傷](l)号[財産の破壊・接収](n)号[毒性兵器の使用](o)号[毒ガス兵器の使用](p)号[無差別兵器の使用]および(q)号[人格の尊厳侵害]ならびに刑事国際法および国際人道法に基づき、アフガニスタンの人々に死と破壊をもたらし、男性、女性および子供を不具にする戦争法で禁止された武器の使用によってアフガニスタンの人々に対して行われた戦争犯罪について、有罪
3 ICTA規程第4条[人道に対する罪](a)号[殺人](b)号[せん滅](d)号[強制移送](e)号[拘禁](f)号[拷問](h)号[迫害](i)号[非人道的行為]および国際人道法に基づき、軍事侵略、爆撃および人道的援助の欠如に起因する多数のアフガニスタンの民間人の生存を脅かした件に関する、人道に対する罪について、有罪
4 ICTA規程第3条[戦争犯罪]第1項(a)号[殺人](b)号[拷問・非人道的扱い](c)号[深刻な苦痛・重大な傷害](f)号[戦争捕慮等の裁判を受ける権利剥奪](g)号[強制移住・移送]および同条第2項(f)号[降伏した戦闘員の殺傷](k)号[偽計殺傷](p)号[無差別兵器の使用](q)号[人格の尊厳侵害]および第4条[人道に対する罪](d)号[強制移住]ならびに国際刑事法、1949年のハーグ条約およびジュネーブ第3条約に基づき、降参したタリバン兵その他の捕虜の拷問および殺害並びに非人道的な状態での拘禁および無実の民間人の移送について密閉したコンテナでの捕虜の輸送、窒息による死亡、内部に捕虜がいるにもかかわらず換気孔を開けるためのコンテナヘの射撃による死亡、シェバルガーン刑務所における状況に関して、この法廷において、被告人ブッシュ大統領は疑わしきは罰せずとされる権利がある。しかしながら、本件は決着が付けられたものではなく、別に他の裁判体によって裁判を受ける可能性はある。本法廷に提出された証拠は、米軍の関与を裏付けるために十分ではない。
5 ICTA規程第3条[戦争犯罪]第1項(c)号[深刻な苦痛・重大な傷害](g)号[強制移住・移送]および同条第2項(b)号[民用物等の攻撃](c)号[人道的支援の人員等の攻撃](d)号[自然環境への長期的重大な損害を含む攻撃](e)号[非武装都市等の攻撃](g)号[徽章等の不正使用による攻撃](h)号[民間人の強制移住・移転](i)号[宗教等の施設の攻撃](l)号[財産の破壊・接収](n)号[毒性兵器の使用](p)号[無差別兵器の使用](q)号[人格の尊厳の侵害]ならびに第4条[人道に対する罪](b)号[せん滅](i)号[その他の非人道的な行為]に基づき、深刻な飢饉によって生存を脅かされ、大量の難民が発生し、飢え、移住、疾病または人道援助の欠如を原困とする死者が多数発生している国において、民間人および民間インフラストラクチャーを爆撃して人道的にみて深刻な事態を引き起こし、さらに多くの難民を発生させたことについて、有罪
6 ICTA規程第3条[戦争犯罪]第2項(o)号[毒ガス等の使用](p)号[無差別的兵器の使用]および第4条[人道に対する罪](a)号[殺人](b)号[せん滅]ならびに刑事国際法および国際人道法に基づき、アフガニスタンの住民を絶滅させるために使用された劣化ウラン武器に関して、および、アフガニスタンにおける放射性武器の使用に直接起因して、この地域全体の近隣諸国に対しても生存を脅かし、生命体の絶滅、空気、水および食資源の汚染、または植物を含む、すべての生命体の遺伝情報の不可逆的な変更など、オムニサイド(生命体絶滅)の罪について、有罪
7 ICTA規程第3条[戦争犯罪]第2項(o)号[毒ガス等の使用](p)号[無差別兵器の使用]および第4条[人道に対する罪](a)号[殺人](i)号[宗教等の施設の攻撃]ならびに刑事国際法に基づき、劣化ウラン武器の使用によって米国軍兵士、英国軍兵士その他連合軍兵士を放射能汚染にさらし、遺伝情報の不可逆的な変更によってその生命および生理的機能を脅かし、将来の子孫に災いをもたらすことについて、有罪

 II この判決の意義

 被告人ブッシュ大統領は、有罪とされた。したがって公職に留まるには不適当である。アメリカの市民、兵士およびすべての一般文民職員は、被告人ブッシュ大統領とブッシュ政権に対する協力をすべて撤回することは、憲法その他の観点からみて、正当である。また、被告人ブッシュ大統領およびブッシュ政権による違法な命令に従うことを拒否することは、正当である。とりわけ、上官の不法な命令に従ってはならないというニュールンベルグ原則に基づき、アメリカその他の国の人々の死活にかかわる違法な軍令に従うことを拒否することは正当である。

 III 勧  告

A 劣化ウラン武器使用の即時停止および製造、貯蔵の一時停止
  ウランを濃縮する過程で発生する劣化ウランは、高密度であるために貫通力・被弾距離として攻撃兵器に加工され、1991年の湾岸戦争で初めて実戦で使用されて以来、コソボ、アフガニスタン、そして再びイラクで使用された。劣化ウランは、化学的に人体に有毒であり、物理的に低線量の放射線を発し、生物学的に被曝したものの遺伝子情報を不可逆的に変更するものであることは明らかである。しかも微粒子となって空中に飛散し、水中あるいは土壌に含まれ、汚染された地域は広範囲に及ぶ可能性がある。これを直接摂取した場合に人体に有害であるばかりではなく、呼吸や飲料水の摂取あるいは食物連鎖を通じて人体に取り込まれるおそれも大きい。その機序(mechanism)は必ずしも明らかでないとしても、およそ人間をはじめ、あらゆる生命体にとって制御できない危険という意味で、有害無益なものと言わざるを得ない。低線量であるがために、放射能測定器で検出できないとしても、安全性の証明がない限り、劣化ウラン兵器が使用されたことは、あらゆる生命体にとって回復できない重大な障害を発生させる恐るべき兵器といわなければならない。「沈黙の大量虐殺」兵器といわれているのは、この意味である。
  このような兵器が使用のみならず、その製造や貯蔵が、現行の国際人道法の諸条約によって厳格に禁止されていることは、別に詳述した通りである。したがって、劣化ウラン兵器の使用は直ちに停止しなければならない。また、劣化ウラン兵器を製造する企業、劣化ウラン兵器の使用を決定することに関与した国家元首、国防省の長官、職員、将校その他のものは、国際刑事裁判所または国内法において、刑事訴追を受け、かつ、賠償責任を負う立場にある。クラスター爆弾およびデイジー・カッターとよばれる気化爆弾の製造、貯蔵はただちに停止すべきである。これらの兵器も、現行の国際人道法の諸条約によって禁止されている。したがって、これらの兵器の製造、購入また軍事的目的での使用を許容する行為は、これらの兵器を使用した者も含めて、戦争犯罪として刑事訴追を受けまたは賠償責任を負う立場にある。
  劣化ウラン兵器および上に述べた無差別的に使用され、または無差別的な効果を発揮する兵器は、対人地雷条約の経験に照らして、条約で禁止することも有用である。これによって、これらの兵器の違法性を明確にし、その製造・売買・移転・貯蔵を監視し、究極的にこれを廃絶するために効果的な方法を定めることができる。すべての国は、この条約の締結と批准について、全人類と地球上のあらゆる生命体に対して、否定することのできない法的義務を負うと言わなければならない。

B アフガニスタン民間人に対する賠償の支払い
  国際法上明らかに違法な武力行使によって癒しがたい損害を受けたアフガニスタンの人々は、とりわけ侵略戦争、戦争犯罪、人道に対する罪および劣化ウラン兵器の使用に関して、個人としてまたは集団として、賠償を得る権利をもっている。これにはすでに歴史的な先例がある。
  すなわち、ロッカビー事件やフランス航空機の爆破による被害者に対してリビア政府は補償を支払い、ホロコースト(大虐殺)についてドイツ政府とドイツ企業はユダヤ人とイスラエル政府に対して補償を支払い、第二次世界大戦中に不当に収容された日系アメリカ市民に対してアメリカ政府は補償を支払った。
  このような権利の法的根拠も明らかである。すなわち、2000年4月の国連人権小委員会はテオ・ファン・ボーフェン(Theo Van Boven)が「人権侵害および人道法違反に対する救済と賠償の権利について」という報告書で述べた原則を承認しこれを採択した。賠償責任を負う者については、アフガニスタンへのアメリカの軍事的政治的な関与に深くかかわる企業(ユノカル社とセントガス・コンソーシアム)、被告人ブッシュ大統領個人、アメリカ政府、英国、北大西洋条約機構の国々、パキスタン、その他基地または兵站支援を提供した国々など、法的に重要な事実について一定程度の証明がなされた場合に責任があるとされる個人または団体とすべきである。
  賠償額は、リビア政府の先例にならい、ロッカビー事件の被害者およびフランス航空機墜落の被害者にリビアが支払った賠償額を基礎に算定されるべきである。地球は人類全体の共通の家であるから、被害者の生活水準をもとにではなく、加害者の責任に応じてなされるべきである。

C ユノカル株式会社(Unocal Corporation)の定款取り消し(to revoke Charter)について
  1998年に、アメリカの複数の市民グループがカリフォルニア州司法長官に対して、アメリカ国内、アフガニスタンおよびミャンマーなどの国々における重大な人権侵害を理由として、ユノカル社の定款の取消しを求めて提訴した。責任が存在する限りにおいて、セントガス・コンソーシアム(Centgas consortium)傘下の会社に対しても提訴することを勧告する。ユノカル社とセントガスは、アフガニスタンおよび近隣諸国において直接的な政治的・経済的支配を確立するために、被告人ブッシュ大統領と共謀して、侵略戦争を行ったと疑うに足りる事実にかかわっており、このようなよこしまな動機をもって、市民の税金という公的資金でまかなわれる軍隊を利用したと疑うに足りる事実にかかわっている。

D 未完の任務:20世紀と21世紀の戦争の本当の理由は何か。
  20世紀は「戦争の世紀」であった。これを反省し、克服するために、さまざまな手段の一つとして戦争を記録し、裁き、戦争責任を明確化しようとしてきた。これは不十分ながら、ニュールンベルグ国際軍事裁判と極東国際軍事裁判で開始された。すべての人びとは、市民として、法律家として、立法者として、それぞれの立場に応じて、戦争責任を法的に追及する任務を継続し、これを未完成に終わらせてはならない。
  戦争の本当の原因として、侵略戦争を企て、侵略戦争によって潤い、侵略戦争を利用する「黒い企業家」の影がとりざたされる。しかし、これまでの国際法廷や国内裁判所では、「企業家の責任」は「ベール」に覆われてきた。
  「企業家のベール」をはぎとらなければならない。

E 兵器産業や地球的な規模で展開する大企業に対する公的管理を検討する。
  戦争の原因として、軍隊や産業界が癒着して、情報を操り、公的資金(税金など)を濫用し、市民を戦争に駆り立てることが指摘されている。このような軍産共同体の弊害については、つとに、アメリカ合衆国大統領ドワイト・アイゼンハワーが、退任演説の中で、鋭く指摘している。
  戦争を防ぐために、すべての国家の予算は国際的な軍事産業が手をつけられないように保護されなければならない。このような企業は、戦争や武力紛争、テロリズムという市民にとって深刻な事態を自己の利権に転化し、希少資源を非生産的な軍備に注ぎ込むことを企て、そそのかし、促進することについて否定しがたい動機をもっている。軍事産業が、利潤を極大化することに最大の関心を払う個人の手中に握られていることは、地球市民にとってそれ自体が重大な脅威である。
  戦争や戦争の準備は、国民経済を劣化させる。IMFが警告を発したように、アメリカ経済は深刻な状態にあって、保健、住宅、教育などのインフラストラクチャーは決して「超大国」の地位にふさわしい内容ではない。軍事産業やその関連企業は市民が与えた補助金を受け取り、アメリカの人びとはそのツケを払わされている。アメリカが戦争をすれば、単にアメリカ経済が影響を受けるだけでなく、アメリカ経済に連結され、あるいはこれに依存する国の経済に悪影響が生じている。
  世界の貿易や投資にかかわる仕組みも、国民経済が軍事に傾斜することを防止するよりも、むしろ促進するようなものがある。たとえば、ガット21条では軍需産業界の奨励のために、秩序維持などの一国の安全保障に関する軍事支出に自由を与えていた。また、戦争を誘発する環境を変えなければならない。とりわけ貧困と欠乏が地域的な武力紛争の原因となることは広く知られている。このような原因を取り除くために、国連憲章にうたうように、全人類の福利と人権の尊重をいっそう強力に進めることが必要である。このために、国民経済に対する巨大な影響力をもつ国際金融機構、とりわけ世界銀行および国際通貨基金(IMF)に対して、市民社会が監視を強めることが求められる。国際的な金融が人びとの成長する権利などに及ぼす問題は、国際フォーラムにおいて、公開の討論がなされ、貧困と欠乏が地球上から永遠に除去されるように、国際金融が利用される方法を確立し、これを誠実に実施するよう努めなければならない。

F 国連の改革
  国際的な紛争は、国連の安全保障理事会だけではなく、国連総会での公の討論、国連の人権機関での討議と調査、国際司法裁判所の司法的解決や勧告的意見などを通じて、平和的な解決を促進することが期待される。アフガニスタンへの武力攻撃でも、国連の「限界」が指摘された。とりわけ、安全保障理事会が常任理事国に「拒否権」を与えていることが大きな障害となる場合がある。
  これは、戦前における国際連盟が紛争解決について弱い権限しかなかったことの反省に基づき、国際連合では、安保理事会という特別の機構を設けて、紛争解決についての権限の強化とともに常任理事国の「協調」というシステムを採用したことに由来する。大国の「協調」原理は時として大国間の「勢力均衡」原理に転化する。これが第二次世界大戦の遺産であって、特定の政府に不釣り合いな地位を与えるものであることは問題となっている。世界の現実に即して、しかも世界を導く地球的な規模での民主主義という理念に即して、国連の仕組み全体を点検すべき時期に来ている。そのためには、たとえば、民主主義の原則に基づく国連総会の権限を強化して、国連総会が紛争の解決においても正当な役割を引き受けるように改革することも検討すべきである。あるいは、安全保障理事会の運営を改める必要も指摘されている。たとえば、拒否権をもつ常任理事国制度を廃止するとか、あるいはそもそも常任理事国制度を廃止して、理事国の交代原理によって任期ごとに選出するとか、民主主義の原理をいっそう強化することも検討しなければならない。

G 国連憲章第33条の遵守と活用
  国際社会はあらゆる紛争を非軍事的・平和的に解決すべきである。
  国連憲章の第33条は、いかなる武力行使の禁止を定めた国連憲章第2条を踏まえて、紛争の平和的解決を優先すべきことを定めている。したがって、たとえ国連憲章51条が「自衛のために」、しかも安全保障理事会が必要な措置をとるまでの期間、武力行使を容認するという理解に立ったとしても、自衛つまり正当防衛であっても、あるいは言葉を換えて言えば、たとえ「正義」の戦争であっても、そのような武力行使も、当該政府が武力行使をするに先立って、国連憲章33条に定める平和的解決のための努力がいかになされたのかについて、誠実かつ正確に、経過を公表する必要がある。安全保障理事会および国連総会は、このような趣旨において、国連憲章第33条の手続きが遵守されるように、それぞれの権限の範囲内で最大限の努力を尽くさなければならない。
  以上、宣告する。

アフガニスタン国際戦犯民衆法廷
判事 新倉修(Osamu Niikura)
   ロバート・I・アクロイド(Robert I. Akroyd)
   ニルーファ・バグワット(Niloufer Bhagwat)
   ピーター・アーリンダー(Peter Erlinder)
   水島朝穂(Asaho Mizushima)
(この判決文は、第4回公判当日に会場で配布されたものである)

 

 


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